――はずだった。
かれこれ20分後。
最寄の駅に着いたら、いつもより構内が混雑しているような気がする。
一体どうしたんだろう、と天井から吊り下げられている電光案内板を確認したら『運転見合わせ』との表示。
さらにその下のスペースには『只今、車輌故障のため全線にて運転を見合わせております』という文言が横スクロールで流れている。
他の乗客たちが駅員に次々と詰め寄り
「いつ運転再開するんだ。」
「○○駅まででいいから早く動かしてくれ。」
などと問い質したり要望をぶつけたりしている。
それに対して駅員は
「申し訳ございません。あと10分から15分ほどで運転再開する予定です。」
ただただ、平謝りで忙しそうに対応をしていた。
……10分から15分で再開するのなら、まだ間に合うだろう。
腕時計を見ながらそう考えて、聡太は改札を通りホームへと向かうのであった。
いつもより人の多い列に並び、バッグの中から1冊の小説を取り出して時間をつぶす。
こうしている間にもホームには人が増えていき、職場に電話をかけているらしい声があちこちからどんどん聞こえてくるようになった。
「……まだ来ないのかよ。とっくに来てもいい頃だろ。」
苛立った男性の呟きと舌打ちが耳に入った。
そういえば、もう結構な時間が経っているような……。
もう一度腕時計を見ると、運転再開するはずの15分をとうに過ぎており、既に25分が経過していた。
……そろそろまずい。
普段なら学校のある駅に着いてから昼食を買っているのだが、今日に限ってはその余裕がなさそうだ。
仕方ない。電車に乗ったら、真っ先に学校へ向かおう。
もし昼食を食べ損ねたとしても、放課後に慰めとして弁当+デザートでも買えばいいし、なんて考えて。
ホームにお待ちかねの車輌が入ってきたのは、さらに5分経った頃であった。
乗り換え駅で遅延証明書を受け取りはしたが、朝の職員会議にはギリギリ間に合った。
こういうときは他の先生方のように車通勤のほうがいいのかなぁ……と少し思うが、街散策が好きなせいもあって決定打には到らない。
職員会議が終わって、同僚の書道教師が声を掛けてくる。
「保科サン珍しいな。ギリギリに着くなんて。」
「電車が故障で遅れてしまって。」
「そっか。月曜の電車ってなんか遅れること多いよなー。」
「うん…。在原先生は徒歩通勤だから、遅刻とは無縁かな。」
「寝坊しなきゃな。」
そんなやりとりをしてから、授業の準備をするために一旦社会科準備室へと移動する。
目的の部屋の扉を開けて、窓際に置く事務机にスタスタと直行。
「今日はヨーロッパの地形や運河についてだから……ん?」
机上の本立てに収まるヨーロッパ地理の本を手に取ろうとしたとき、1枚のメモに気がついた。
それは、花と蝶々が印刷されたものでオレンジのペンでメッセージが書き記されていて。
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お約束していたお弁当を作ってみました。
お口に合えばいいのですが…。
驚かせたかったので何も言わないで持ってきてしまって…
もし何か昼食を購入されているようでしたら、ごめんなさい。
今日もお仕事、頑張ってください。
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「……琴子……?」
差出人の名前は書いていなかったが、直感でその名を呟いた。
その時、椅子の座面に置かれた黒のドット柄のランチバッグが視界に入る。
中にはダークブラウンのお弁当箱とお箸ケース。
いかにも自分好みの色の容器をチョイスしてくれた感じがして、そういえば前にそんな約束したっけ、と残されたメモとランチバッグを交互に見ながら思い出していった。
「……ありがとう、助かった。」
不思議と今朝の焦りが一気に吹き飛んだ。
むしろ電車が遅れたことがありがたくなるくらい。
そんな虫の良い考えに可笑しくなりながら、ランチバッグを袖机の一番下の深さある引き出しにソッとしまう。
こんなに昼食時間を待ち遠しく楽しみに思うのって初めてかもな、と思いながら――。
<END>
先日、近風さんにステキなSSを書いて頂きましたー!!
ありがとうございます!本当にときめいて、どこをどうつまんでも愛情たっぷりなお弁当SSでございましたー!!
あまりにも嬉しくて、お礼に後追いSSを書いてみたのですが…せっかくキュンキュンする女の子らしさ満載のストーリーに対して、激しく拙い後追いをしてしまった感が否めない……がくーんorz
琴ちゃんの初愛妻弁当(笑)は、見た目から最高に美味しそうで、保科さん好みでも私好みでもありましたww
下手な文章がダラダラ続くのも申し訳なくて、ランチバッグを受け取ったところでSSを終了してしまいましたが、この後にはまだ続きが…!
待ちに待っていた昼食時間にパカッとお弁当箱開けて、思わず子どものような笑顔を浮かべたりするわけです(*^ω^)ノ
で、リクエストの生姜焼きが4枚も重ねて入っていて、「生姜焼きのミルフィーユやー!!」って叫んだとか叫んでないとk←
ご飯はごま塩ご飯。
可愛いピックに刺さったポークウィンナーやアスパラベーコン、玉子焼き2個、ホウレン草のおひたしとプチトマト…綴っているだけでお腹が鳴りますw
保科さんは誰にも見られないよう、こっそり一人でお弁当を食べて、そのあとに琴ちゃんにメールしたようですw
“今朝電車が遅れて昼食買えなかったから、本当に助かったよ。
どれも、とてもとても美味しかったよ。
朝早起きして作ってくれて、ありがとう。
生姜焼きも入れてくれてありがとう(笑)。
ごちそうさまでした。”
ランチボックスはきれいに洗って、放課後に返却したんだと思いますw
琴ちゃん、このたそ……保科さんに幸せなランチタイムをありがとう…!!
私まで幸せになりました~ヽ(≧∇≦*)ノ